あなたの声が聞きたくて【another story】
第8章 国見英
「優さん起きて…」
暖かな春の陽気に誘われ、スヤスヤと寝息を立てて気持ち良さそうにベッドで眠る優さん。
大きめのシャツとそこから覗く赤い華は俺の物。
社会人2年目の俺は優さんと同棲を始めた。
家事は二人で分担して、ご飯も出来るだけ一緒に食べようって決めて。
もうそろそろ始まる世界大会の前の束の間の休息は、俺との営みに使われた。
「優さーん。」
頬っぺを抓るとふひひ、なんて幸せそうに笑うもんだから起こす気がゼロになって俺も隣に寝転んだ。
柔らかな匂いに優しい温もり。
俺の日常に優さんがいない世界なんて
もう想像出来ない。