あなたの声が聞きたくて【another story】
第8章 国見英
「あきらーっ!」
金田一と体育館から教室に戻る途中、聞き慣れた声のした方を見ると三階から手を振る優さんの姿が見えた。
振り返そうと思って手を上げた時
優さんの隣には及川さんと岩泉さんがいた。
彼女を守るように立つ2人に胸の奥がチリチリと焼け付いて、手を振り返すことなくその場を去った。
「いいのかよ、国見!」
「うるさい。いいんだよ」
嫉妬だって事はわかってる。
でも嫌なんだ。
優さんは俺のなのに。
彼女の隣に居るのが俺じゃないことが死ぬほど悔しい。
2年という時間のもたらす距離は俺の想像していた以上に大きくて、決して縮まらないと思い知った瞬間だった。