あなたの声が聞きたくて【another story】
第7章 岩泉一【番外編】3
「新郎新婦の退場です。」
声がかかり、後ろを振り向く。
一番最初に目に入ったのは私の、私達のお父さんとお母さん。
目を真っ赤にさせながらニコニコと笑ってくれている。
お父さん達はそんなお母さんの腰や肩に手を添え、しっかりと支えていた。
「私達もあんな夫婦になろうね」
「ったりめーだ。」
一歩足を踏み出せば今度はかつての仲間とライバル達と目が合う。
徹は涙で顔がぐしゃぐしゃ。イケメンが台無しになってるよ。
みんな、おめでとう、幸せにな、って笑って声をかけてくれた。
出口付近になるとかつてと今の監督、コーチ陣がいた。私を代表に選んでくれた人。私を世界一に導いてくれた人。青春を一緒に過ごした人。
溢れ出るたくさんの思い出に、涙が出そうになった。
「腕、ちゃんと組んどけ。後でたんと甘やかしてやっからよ」
「はじめの癖にそんな気遣いずるい…。」
「へーへー。」
結局涙を落とすことなく教会から出た。