第9章 悪化する動悸
「ん、分かった。
それと、あいつじゃなくてカイだよ」
「そんなモン、俺の知ったこっちゃ無ぇよ。
誰が名前なんか呼ぶか」
「なんで?
ペンギンさんは呼んでくれたのに…」
「ペンギンはペンギンだ、俺には関係ねぇ。
だがまぁ、どうしても呼んで欲しいっつーならお前がその分の褒美を寄越せよ」
ニヤリ、と怪しく笑うトラファルガーに、不覚にも胸が高鳴る。
「じゃ、じゃあ良いっ!」
「冗談だ。
お前にそんなこと期待してねぇよ」
突き放したように言われると、胸が締め付けられたみたいに痛くなる。
何かの病気…?発作?
分かんないよ…。
ひとりで悶々と悩んでいたら、ある言葉を思い出した。
“ なんかあったら言えよ、力になるから ”
そうだ、ペンギンさんだ。
ペンギンさんなら、何か分かるかもしれない。
「ちょっと測量室行って来るね」
「あ、おいっ。セツナ」
呼び止めるトラファルガーを無視して、測量室に向かって走り出す。