第6章 犬猿の仲
「シャチだけをここに広げてくれる?」
水まで広げられたら、大変だから。
念を押して言う。
「アイアイ!」
気持ち、伝わらず…。
バシャッ、とバケツをそのままひっくり返すベポ。
「…後で掃除しようか」
でないと、それこそ私がバラされるハメになる。
ああ見えても、几帳面な部分があるからね。
神経質だし。
見つからない内に、証拠を隠滅しておかないと。
そう心に決め、目を閉じ気持ちを集中させる。
ベポは、その間もワクワクした表情で私を見つめている。
「舞え…フェーン」
フェーンは暖かい風。
これでシャチを暖めつつ、乾かす。
「わぁっ!風だっ。
凄いよ、セッちゃん」
「ありがとう、ベポ」
頑張ってはいるけど、全然シャチは乾いてくれない。
「なかなか来ないと思ったら、それやってたんだな」
「あ、ペンギンさん…」
しまった、ペンギンさんのことすっかり忘れてた。
「ごめんなさい、あの…」
「気にするな、特に急ぐことでも無い」
「ありがとうございます」