第5章 ◆休暇の後
「明日には居なくなる、か・・・」
ユウが去った後、
俺は部屋に戻りサラをベッドへと運んだ。
きっと長い時間屋根の上に居たのだろう、
サラの体はひんやりと冷たい。
「・・・にしても、ユウも中々のお人好しさね。」
長時間、サラが泣き止むまで隣にいたんだ。
あのユウがそんな事をするなんて、
あんな淡白な振りしても
実は人を想う気持ちが誰よりもあるのではないか、と
感じてしまう。
「サラも、
そんな事で、泣くなさ。」
布団を掛けたあと、
サラの顔に掛る髪をひとすくいし、退けて
ボソリと呟いた。
「居なくなるなんて、
・・・辞めろよ。」
冷たいサラの頬に手を当てて
零すように流した言葉。
泣いていたと言う割に
涙の跡が無いのはユウの優しさだろう。
ー・・・皆に大事にされてんじゃん。
幸せでいいんさ、
サラが幸せで文句言う奴なんていねーよ。
1度は人に絶望して
闘う度にこの世界にも絶望して
そんな少女が笑ってんだ。
「毎日、笑ってていいんだぜ、サラ。」
俺がその笑顔、守ってやるさ。
心の中でそう呟いて
その場に立つ。
殺風景な、本当に何も無い部屋。
サラが居なければただの空き部屋だ。
そんな部屋を見ながら、
ゆっくりと
サラの部屋を後にした。
「おやすみ」
ドアの外で小さく挨拶を残して。