第3章 ◆過去と今
サラのその言葉が
この狭い空間に響いたとき、
バタン、と音がしたと思えば
俺の目の前を高速で通り過ぎる何か。
それは隣のサラの前で止まり、
ガシリ、とサラを捕える。
「なぁぁんでぇ?!サラちゅぁーん!
ラビに聞いてもらったんでしょ?
ラビと心通わせたんでしょ?!
もう、ラビと恋人になっていいから!
お兄ちゃん、この際許すから!
初デート感覚でさっ!
ね?!任務行ってよ!お願いしますぅ!」
その正体は紛れもなく、コムイで。
涙を滝のように流しながら
サラの両腕を引っ掴み
見上げながら懇願する。
その痛々しい姿は
リナリー関連で何度も見てはいるが
サラに対してのことは初めてである。
ー…しっかしなあ、
なんで今回の任務に
そんな執着するんさ?
今まで別に俺とサラが行かなくたって
やり切ってんだろ。
『コムイさん…。
貴方の魂胆は分かってます。』
俺が頭を捻らせていると
サラが落ち着いた様子で答えていた。
継の言葉が気になって
俺は隣のサラをまじまじと見る。
サラはそんな俺に構うことなく、
『ノア、でしょ?
それも、2、3人はいる。…のかな。』
そう、真顔で発していた。
その発言に、ふざけた顔を元に戻すコムイ。
『イノセンスの回収という名目の任務で
先に行ったチャオジーが
まだ帰ってこない所を見ると
帰ってこられない何かがあったんですよね。
それに加えてこのエクソシストの数
ラビがいるのに私も含まれるなら、
きっとそれはノア関連。
そして、
…一大事。』
その場に立ち上がるコムイを見上げて
サラは言い切った。
「いや、相も変わらず
凄まじい洞察力。
…その通りだよ、サラ。
これ以上の詳細は明後日話すから、
明日はゆっくり休みなさい。」
参った、と言わんばかりの表情を浮かべ
コムイは俺とサラを交互に見ると
優しく笑いその場を後にした。