第3章 ◆過去と今
『…ラビ、聞いてたの?』
困った表情で恐る恐る俺に尋ねる
さっき会ったばかりのサラは
少しだけ顔色が良くなっていた。
「ちらっとな。
俺の名前が聞こえて
何の話かと思えば
気になる話題も聞こえた。
…俺も混ぜてさー?」
ニヘっと笑って真剣味を誤魔化す。
サラはそんな俺に釣られて笑うわけもなく
小さくため息をこぼして俯いた。
それと同時に今まで座っていたコムイが席を立つ。
「サラ、
この機会だからゆっくりラビと話すといいよ。」
そう言って近くのソファにサラを座らせ
「君を笑顔にした彼なら、
きっと受け入れてくれる。」
サラの頭にポンポンと優しく手を弾ませてから
俺へと向き直った。
「ラビ、よろしく頼むよ。
…(ニッヒャ」
…え?。何さ、その笑い。
コムイから見てサラとは反対側に居る
俺へと送られたコムイの視線は
やたらとニヤニヤとしていて
「ねー?
ラービくーん?」
…怖ぇんだけど、何企んでんのこの人。
不気味に顔をニヤつかせながら俺に近寄る。
そして、
「逃げたら怒るよー?」
俺の横を通り過ぎる際、カチャリと
何処からともなくドリルを取り出し
脅しをかけるコムイ。
「わかった!わかったから!
その物騒なん仕舞えって!」
俺が後ずさるとコムイもグイグイ詰め寄ってくる。
観念して許しを請う俺をみて
「じゃ、後はよろしくねー!」
ニコニコしながらそう告げると
軽やかに部屋を出ていった。
「…。」
嵐が去ったような感覚。
…ここのトップあんなんで大丈夫さ?
俺がコムイが出ていくのを見送っていると
『コムイさん、いい人だよね。』
不意にサラから話し掛けられる。
案外、近くで声がしたのに振り返ると
「近っ!」
超至近距離にサラが立っていた。