第2章 初デートをキミに*及川 徹
「俺、花香とキスしたいんだけど…」
間近でそう呟く先輩には余裕が見える。
さっき咄嗟に口を突いて出た言葉も、意味のないものだった。
「花香ちゃんは、誰かが見てるって言ってたけど…今はイルカショーやってるからこのフロアには誰もいないよ。」
ついに耳元で声がした。
固く目を閉じているせいで、それがよけい近くに感じられて足元から崩れ落ちそうな破壊力だ。
「……徹先輩!!!」
その状態に我慢できなくなって、先輩を呼ぶと一瞬のうちにこちらからキスをする。
「うっわー…花香ちゃん、大胆だね。」
掠めるだけのキスでは先輩の余裕は崩れない。
私なんて顔から火が出そうだ。
「花香」
名前を呼ばれて、空いている方の手で頬を撫でられる。
こうやって、たまに呼び捨てにするのはズルい。
だって、いつでもかっこいいのにもっと好きになる。