第2章 初デートをキミに*及川 徹
「……先輩、待って…」
離れていく足音を聞き、振り返ることなく思わず手を伸ばす。
「……徹先輩、ごめんなさい。」
後ろを向いて掴んだままの手は離さずに先輩の方を向くと、一瞬驚いた顔をしてそのまま触れていない方の手で先輩は自分の口元を隠した。
「そういうの反則じゃないの…」
そう言って、おでこに髪の上から先輩はキスを落とす。
「……先輩こそ、そういうのは反則です。」
「あれ、もう徹って呼んでくれないの?」
顔を上げると、少しだけ勝ち誇った顔の先輩と目が合った。
「………徹、先輩…」
「なーに?」
「誰かに見られます…」
つい口から出た言葉は、なんとも弱々しく情けのない言葉だった。
「本当にそんなこと気にしてるの?」
口元に笑みを浮かべながら、徹先輩の顔が更に近くなる。