第7章 chapter 7
「京香、一緒に帰る?」
部活後、水輝が京香を誘う。
「うん…」
京香は罪悪感でいっぱいだった。
水輝への想いが増えていったのに、全部俊への想いに変わってしまった。
これからもきっとその繰り返し…
そんなことを考えながら沈黙の帰り道を過ごす。
「…ね」
「え?」
「月がキレイだね」
「月なんて出てないけど…」
空には夕日が輝いている。
月なんか見当たらない。
それでも水輝は微笑んでる。
「ねぇ」
「うん?」
京香は一回、深呼吸する。
そして、言いだした。
「別れよう」
そのたったの四文字が2人の心を重くした。
息苦しさを無視して京香は話し続ける。
「もうダメみたい。耐えられない…」
「…」
水輝はなにも言わない。
その沈黙が息苦しさを増す。
「他に、好きな人がいるの…」
「俊、でしょ?」
京香はうつむいたままうなずく。
「うん…なんとなくわかってた」
京香が見上げると水輝は悲しそうな笑顔で笑っていた。
「ほんとは告白される前から…なんとなくわかってた。それでも、俺を好きって言ってくれたから」
「ごめんなさい…本当に…」
不思議と京香の瞳からは涙が出てこない。
ドラマとかだったら女の子が泣いて謝るのに…とか考える。
「大丈夫だよ。またクラスメートとしてよろしくね」
水輝の優しさに京香は罪悪感が増える。
「ごめんね…私が全部始めたのに、こんな勝手に終わらせて…」
「もういいよ。それに…」
初めて水輝の表情が曇った。
「え?」
「俺、京香には言ってない秘密があるんだ。ていうか、誰にも言ってない秘密が」