第8章 及川先輩と、が、☓☓☓
何でかな。
多分、彼を賛美する女子の一人になりたくないんだ。
あんな風にしてる私はイヤだし、私は一群の中に埋もれたくない。
…………別に、及川先輩のコト、好きじゃないケド。
「ねぇ、いいでしょ?」
絶対にNoなんて云わせないとばかりの自信満々の甘い声は皮肉にも私を冷静にさせる。
「い、やっ、ンッ、ですっ、あふぁ」
弱々しく手で及川先輩を押し返す。
及川先輩が口を離した。
目が合う。
冷たい目。
怒ってる?!
「へぇ、そう……」
傷口を指が撫でて少し痛い。
「取り敢えず今日も放課後よろしく」
及川先輩が去っていく。
何だか急に力が抜けて私は地面に座りこんでしまった。
一一噛まれた傷痕が熱く、痛んだ。