第6章 教えてよ。
「吸うよ?」
低い、甘い声。
何か、イイ声なのが腹立つ!
「どうぞお好きに」
首筋に牙があてがわれる。
ツプッ、とそれが入ってきた。
「あっ、ひゃぁ」
急いで口をふさぐ。
渡先輩みたいな遠慮した感じはなく容赦なく吸われる。
それだけ私の体もおかしくなるのだ。
渡先輩が吸った後だからというのもある。
「気持ちよかったら俺に抱かれてイッてもいいんだよ?」
低いひそめられた声で云われて舌が傷口のふちを舐める。
「そんな、…なりません」
足は震えるけど、まだ、…まだ大丈夫だもん。
「岩ちゃんはどうだった?」
ちゅっと唇が傷口にキスする。
「んふっ、はっ、そんなの及川先輩にお話する義理はありません」
漏れる言葉にならない声を我慢しながら云う。
「つれないなぁ」
やっと私を離してくれた。
「ま、そっちもサ。君がしたいなら相談乗るよ?」
云って及川先輩も練習に戻っていく。
一一今日ここへ来たのはあまり血を飲まない渡先輩が具合が悪そうだからと及川先輩に呼び出されたからだ。
なら、もうお役御免か。
私は出口に向かって歩き出した。
早足なのは…体が変だから…じゃないよ。
違うよね。
違う違う。
冷たいジュースでも飲んで可憐を見たら大丈夫。
一一なのにナンデ私の足は女子トイレに向かってるのかな?