第35章 Holic Date.
「美味しい」
クレープを食べて嬉しそうに目を細める顔も可愛らしい。
そう、一一矢巾先輩はぐいぐい本音丸出しにこなかったら多分私はころんでしまうくらいにはかっこいいのだ。
「どうした?」
顔をしかめる私に矢巾先輩が聞いてくる。
「何でも」
私の返事を聞いて又顔をほころばせる矢巾先輩。
だからいちいちかっこいいんですけど!
矢巾先輩に見られながらクレープを食べきった。
矢巾先輩もコーヒーを飲み終わり、二人で席を立つ。
「どうします?」
「帰る?」
矢巾先輩はビルの出口の方に顔を向ける。
ガラスのドアの外はすっかり日が暮れ藍の闇が広がっていた。
明るい場所から暗い場所へ行くのは何故こんなにさみしくなるんだろう。
隣の矢巾先輩の手を見ずに探りあて握る。
室内にいたからあたたかい手に何だか安堵した。
「帰りたくない?」
「はい」
どうせ帰っても勉強するだけだ。
「じゃあ、さ…」
矢巾先輩の提案に私は頷いて同意した。