第33章 Friend Date.
「待った?」
暮れなずむ教室でまるで艶やかな紅葉に似た色をした空を眺めていた私は入り口に顔を向けた。
「ううん」
答えて机にのせていたカバンを取りマフラーを巻く。
実はこのマフラーは岩泉先輩のだ。
勿論先輩が寒くてはかわいそうなので私の手編みのマフラーを彼は巻いている。
自分の家の洗剤とは違う匂いに思わず顔がゆるむ。
一一と。
浸ってる場合じゃない。
入り口を見れば国見くんが何やら気難しい顔をしている。
「国見くん?」
「つむぎちゃんは…やっぱり俺、好きじゃない?」
国見くんが廊下側に一歩さがったので闇にまぎれて顔が見えなくなった。
「え?」
好き…………?
だよ。
「何でもない。いこ」
手招きされて私は頷いた。
廊下に出ても国見くんは振り向かずに歩きだしてしまった。
何だか気まずい。
どうしてこんな気まずくなるんだろう。