第27章 白齣
「石和部長、今来たんですか?」
私の言葉に部長は首を振る。
どうやらこの辺りにいなかっただけで活動はしていたらしい。
冬も近いからやる事は沢山ある。
根付いている木や移動することにストレスを感じる植物は温室には入れられない。
そういう植物に越冬準備をしてあげるのは我が部の役目だ。
やりきれない分は業者さんや先生も手伝ってくれるけど基本私達でやらなきゃいけない。
部長はそっちに行っていたのだろう。
最近私も中々こっちにかかりきりになれなくて申し訳ない。
から!今日は私がお菓子を作ってきた。
一一お菓子は科学だ。
1g間違えただけで全く物にならなくなる。
だからあんまり凄い物は作れなかった。
ブルーシートに座り鉢植えにしてあるルチィアーノちゃんの葉を拭いている。
その隣に座り私も可憐ちゃんを置いて。
お茶を煎れる。
うちで作ったほうじ茶。
その香ばしい薫りに石和部長が顔を上げる。
「お饅頭作ってきました。食べませんか?」
云えば部長は顔をほころばせた。