第26章 Amazing Date.
更にもう夜と呼ばれ始める時間の上映に客はまばら。
アニメだからそうだろうね。
「はい。つむぎちゃんの」
差し出されたのは底にベリーのジュレと果肉の沈んだトニックソーダだ。
及川先輩は同じトニックソーダのキウイレモンだ。
緑のジュレとレモンの輪切りがシュワシュワのソーダの中で泡を纏って踊っている。
席の真ん中にはポップコーン。
「エビチリ味とキャラメル味だよ」
及川先輩が一つ取りながら云う。
赤いからエビチリの方かな。
「ん。辛くないからつむぎちゃんも平気だね」
しゃくしゃく音を立ててポップコーンを食べながら及川先輩。
毒味してくれたのか。
「じゃあ、いただきます」
ソーダを混ぜると全体がピンクに染まって可愛い。
ちゅっと吸うとジュレの甘酸っぱいラズベリーの味が口に広がりしゅわりと炭酸がはじけ最後にストロベリーの果肉の甘さが歯で噛み砕かれてふわりとだだよう。
「美味しいです」
ひとしきり喉をうるおしてから及川先輩を見る。
まだ映画は始まっていない。
「うん。良かった」
笑う及川先輩の口元にはポップコーンのカスが付いている。
フッと笑って。
飲み物を置いて伸び上がり及川先輩の口元に唇を押し付けペロリと舐める。
「……」
「……?」
今度は私の付けていたグロスが付いてしまったので指先で拭う。
ピンクに艶めく指をハンカチでふいていると及川先輩の指が私の顎をすくう。