第21章 限界ボーダーライン
「何で岩ちゃんなの?何かされた?まさか岩ちゃんに渾身のチャームくらった?岩ちゃんチャーム苦手じゃなかった?」
ねぇ、と笑う及川先輩はファンの女の子なら卒倒しそうな甘い笑みを浮かべる。
…でも目は笑ってない。
真冬の北海道の屈斜路湖すら温かく感じそうな絶対零度。
視線で人を殺せるなら、私なんか即死しそうな眼差しをしている。
「岩泉さん、誘心系はほぼ出来ないんでしたっけ」
唯一落ち着いている金田一くんまじ天使。
「その岩ちゃんになんて云われてつむぎちゃんは堕ちたのかなぁ?」
クルリと切れ長なのに案外大きな目がキョロリと私に向いた。
その中に氷を抱いたまま。
「『もし、お前に付き合えって云ったのが俺が一番なら俺と付き合え』」
答えた私に矢巾先輩がバンと手近なロッカーの戸を叩く。
僅かに板面がへこむ。
ひっ!流石の大食漢。
「じゃあ俺が一番に付き合ってって云ったらワンチャンあったってコト?!」
叫ぶように絞り出される言葉に私は頷く。
「はい、私は私の血ではなく、『私』を側に置いてくれる人が欲しかったんです。だからこの場にいる方全員にワンチャンありました」