第16章 トワイライトカノン
「ひゃぅあっ」
私もゆすられて壁に背をつけて悲鳴をあげた。
「矢巾、お前はホント抜け目ないな」
矢巾先輩を引き離した岩泉先輩があきれたように云い、云われた矢巾先輩は及川先輩ヨロシクうへぺろ、と笑ってごまかす。
「大事ないか?」
岩泉先輩がかがんで、ちぢこまっている私の頬をペシペシたたく。
「ふぁい」
思わず岩泉先輩の手にすがって半泣きになる私。
「ほら、行くぞ、じゃあな矢巾」
「つかーれっス」
矢巾先輩はもう私には興味がないとばかりにかばんに手をのばし。
私は岩泉先輩に手をひかれ部室を出る。
「…岩泉先輩、あざます」
手をグイグイひかれて歩きながら云えば、大きな背中がピタリと止まる。
「ふぶぁっ」
背中に鼻先をぶつけて私も止まった。
「矢巾と何してた」
岩泉先輩の声が何か震えてます。