第14章 リミットドール
「一年だけか」
鋭い眼光を向けてくるのは京谷先輩だ。
「いつも私を心配してくださる京谷先輩が好きですよ」
優しくて、強引で、奪うみたいなのに包むようになめらかな先輩が好きだ。
「ぼ、僕は?!」
必死な面持ちで名乗りを上げる渡先輩に立ち上がって近付く。
「勿論、大好きです。あなたの恋人になれる方が羨ましいくらいに」
それは私じゃないんでしょう?
私はオモチャ。
可愛がってゴッコ遊びをするオモチャ。
だから私はいつか用済みになるんだろう。
一一薔薇の花嫁?
彼女は結局誰の愛も受け入れず学校という世界を去ったじゃない。
「俺、俺は?!」
矢巾先輩の焦った顔はいつも可愛い。
「私が誘えばついてくる淫売だって噂握りつぶそうとしてくれたんですよね、知ってますよ」
私がバレー部に出入りするようになったのをよく思わない一部の女子が流した噂だ。
他愛ない。
でも真に受ける人もいる。
「いや、俺は及川さんに相談しただけだし?!」
何でいいコトをしているのに、この人は慌ててるんだろう。
「守ってくれて嬉しいです、大好き」
ぎゅっと抱きついて伸び上がってキスする。
みんな大好き。
ただのオモチャでも。
愛される、ゴッコ遊びは温かくて愉しい。