第21章 【2つの悪寒】
「やっぱりパソコン部にやるんじゃなかったかな。」
「何でっ。」
「うちの美沙を勝手に萌えキャラの声に当てて。」
「何で萌えキャラて決めつけとんのっ。」
「違うのか。」
「あ、う、確かに今回は萌え系のキャラデザやけど。べべべべ別にえーやん、勝手に販売する訳やなし。」
「当たり前だ。」
力は言って強引に美沙を自分の方に向かせる。兄さん、と疑問形で尋ねてくる声には答えずそっと唇を重ねた。
「んぐ。」
美沙が少し苦しそうに唸るが力は構わず何度もやった挙句もう一度その細っこい体を抱きしめ直した。
そんな美沙は力の温もりに包まれつつもふと見かけたあのよくわからない車を思い出していた。車の事はようわからんけどと美沙は思う。何かお金持ってる人が乗ってそうな感じやったな。どっかのお嬢様が迎えに来てもろてたとか、いやそんな漫画やあるまいし。まさか人さらい、あかんあかん今日日(きょうび)冗談で済まへん。
とりとめもなく考えているうちに美沙は眠くなってきてうっかりそのまま力に抱っこされたまま眠ってしまう。眠ってしまってから義兄の力がしょうがない奴だなと微笑み、両親に見つからないようこっそりと部屋のベッドに運んでくれたことを美沙は知らない。
次章に続く