第21章 【2つの悪寒】
たちまちのうちにパソコン部員達が反応した。誰だあれ、無駄にイケメン、てか縁下女史に抱きついたぞ、何かおかしくないか兄貴ならいいのかよ、女史とあのお兄さんならあり得ます、まあ縁下は天然だし、あ俺あの人ローカル番組で見たわ他所のガッコのバレー部キャプテンだ、無駄に爽やか、リア充爆発しろ、非リアの俺らにゃ明日はないのか、そも世間のレッテル貼りに疑問がある件。
当の及川はこの騒ぎにアハハと笑う。本気で面白がっているのは明白だ。
「美沙ちゃんの新しいお仲間も個性的で楽しそうだね。でもさりげにひどい事言ってる奴いない。」
「路上でセクハラに及んだんやからそら言われるでしょ。」
「きつっ。美沙ちゃんますます強くなってない。」
「ええいっとりあえず離してっ。」
「やだ。」
「無駄にええ笑顔で言いなっ、離してっ。」
「やだー、だって美沙ちゃん連れてくもーん。」
そうこうしているうちにもパソコン部員達が叫びだす。おい誰か縁下兄(あに)呼んでこいっ、無理だ馬鹿やろバレー部にゃ鬼コーチがいんだぞっ、でもこのまま縁下かどわかされたら俺らあの兄貴に殺されるぞ、幼女誘拐、3桁の番号っ、ダメです逆に俺らが悪い事になりますっ、いやこうなったら国家権力使うしかねーだろ、SNSにばらまくかー、だからそれ俺らが悪い事になるってばっボケるならもっとマシなネタにしろっ。
「ちょっと君達っ、俺を誘拐犯みたいに言わないでよねっ。まあお誘いにきたんだけどねっ。」
「あかん、流石にこれ言わなあかん。及川さんもう喋らんといて。」
「美沙ちゃんまで岩ちゃんみたいな事言わないでっ。」
「とにかくお誘いかなんか知らんけど私行かへんもんっ。」
「何でっ。」
「今回は流石にいきなりで無理矢理過ぎて何か嫌っ。」
「美沙ちゃんが珍しくケチっ。」
「誰がケチやーっ。」
ここでパソコン部員の1人があのー、とさりげなく手を挙げた。さっきから後ろですんごいオーラ放ってる方がいるんですけどそちらは。言われた及川は急にブルブルっと身震いをしてから恐る恐る振り向く。果たしてそこにはカンカンに怒った岩泉の顔があった。