第21章 【2つの悪寒】
忘れてはいけない、2つ目に語られた物語の中で積み残しがあることを。そして縁下力、美沙の義兄妹は普段忘れていても常にその恐怖に晒されている。
それはともかくとしてある日の事である。活動を終えた烏野高校パソコン部の面々が正門を出ようとしていた。勿論中には縁下美沙その人がいる。その美沙はまたいつかのように身震いをした。たちまちのうちに同学年のパソコン部員の1人が縁下女史どうしたと言い出して別の奴がお兄さんはまだバレー部にいるはずだがと言う。
「せやからあんたらはうちの兄さんを何やと思(おも)てんねんっ。」
叫ぶ美沙にパソコン部員達は首を傾げて口々に聞き捨てならない事を言い出す。
「学校中で有名なシスコンて何の話、男バレの影の支配者てそこは否定しづらいけど、誰や今魔王様とか言うた人は、リアル妹育成とか言うなスマホアプリかーっ。」
一通り突っ込んで美沙はぜえぜえと肩で息をする。すっげえ全部突っ込んだとパソコン部員達は面白がって拍手をする始末だ。美沙はどこに行ってもこのパターンは変わらないようである。
「とにかく悪寒の原因は兄さんやないと思うんやけど、はて。」
美沙が首を傾げて野郎共と一緒に正門をくぐった所である。
「美沙ちゃーん。」
どっかで聞いたノリの軽い声に美沙は本気で戦慄する。瞬間、
「ふぎゃあああああああっ。」
烏野高校正門前で美沙の叫びがこだました。一応念のため説明すると青葉城西の及川が1人やってきて美沙に抱きついてきたのだ。
「リアルじゃひっさしぶりー。」
「ひっさしぶりーちゃうわーっ。」
流石にブチンと来た美沙は敬語もへったくれもなく怒鳴った。
「まったくお宅いう人は毎度毎度ええ加減にしいやっ兄さん以外は抱っこ禁止や言うてるでしょっ。」
「美沙ちゃん耳痛いっ。」
「誰のせーやっ、誰のっ。」