第16章 【赤面ノシタ】
首を傾げる美沙に月島は言い放った。
「アンタのネタっぷり。ビビリの半分ボケの癖に日向並に他校と何かしらあるよね。青城、音駒、挙げ句の果てに白鳥沢ともやらかしたって何なの。」
「いやあのあれはウシワカさんが離してくれへんかった上に何でか知らんけど他も食いついてきてむしろ私が困ったいうかなんちゅうか。」
「何、いっちょまえに言い訳するんだ。」
またも月島のお説教コース、たまりかねたらしき美沙がううと唸って義兄に目をやる。
「まあまあ月島、ここは堪えてやって。」
力は困ったように笑いながら割って入った。
「また貴方はすぐに甘やかして、自分が一番難儀してる癖に。」
「おい、お前ままコのお目付け役にでもなったのか。」
「影山がお目付け役とかちゃんと言葉使ってるっ。」
「日向ブットバス。」
またも1年がわあわあ言い出し、菅原がこらよせってと割って入る。その間に縁下兄妹は部室の敷居を挟んで視線を交わした。
「あ、」
美沙が呟いた。
「何か妙な予感してきた。」
「うん。」
力は美沙の肩越しに外を見て頷く。
「多分間違ってないよ。巻き込まれないうちに早く図書室に戻りな。」
「わかった。」
美沙はうなずき、ほなお邪魔しましたーと部室に向かって声をかけてから大急ぎで部室棟の階段を降りていく。一瞬ふぎゃあああっと聞こえたのは力の気のせいだろうか。そうして美沙と入れ違いに重い足音が聞こえてきた。そろそろ来るなと力は思う。
「お前ら。」
静かだがとんでもなく威圧感のある声に騒いでいた連中は凍結状態になった。特に田中と西谷あたりは顔が真っ青である。言うまでもない、主将の澤村だ。