第16章 【赤面ノシタ】
「はい、とゆー訳で」
菅原が言った。
「美沙ちゃんどーぞ。」
たちまちのうちに部室内にいた野郎共は動揺した。特に縁下力は激しく動揺した。
「美沙、ななななななんで。」
縁下美沙は表向き男子排球部への出入りが禁止になっている。
「何でて」
今や授業中以外はガジェットケースを離さない事に定評のある義妹は困ったように呟く。
「通りすがりの2-4の人から兄さんがスマホ忘れとる言うて預かってきたから届けに来てんけど、その」
美沙は一旦言葉を切る。
「兄さんこそ何しとんの。」
「いや別に」
力は顔を真っ赤にして田中を締めていた手を離した。
「何でもないよ。」
「シス」
木下が口を開きかけるが力に睨まれてごまかし笑いをする。シスコンが発動したと言うつもりだったのは明白だ。美沙はまあ何でもええけどと呟き、片手で握りしめていた力のスマホを差し出した。
「はい、兄さん。」
「ありがとう。」
「良かったなぁ、気ぃついてもろて。私も兄さんも連絡取れんとこやった。」
「ホントに。」
そんな話をしていると日向が反応している。
「うーん。」
「日向、人の顔見て何唸っとんの。」
「月バリに載った美沙見てみたい。」
「いきなり何やっ私バレーボール関係あらへんしっ。」
「最近動画サイトの専門誌あるよね、アレじゃないかな。」
「私再生数3桁のドピコやもん、ってコラ山口っ。にーさーん、ホンマどないなっとんの。」
「俺に聞かないでくれ。大体田中と西谷のせいだから。」
「またかいな。」
「美沙ーっ、またって何だまたって。」
「せやかて西谷先輩、兄さんが難儀してる言うたら大抵田中先輩が威嚇したとか西谷先輩が暴走したとか月島と日向影山が揉めたとかそんなんばっかり。」
「ちょっと、どさくさに紛れて僕を混ぜないでくれる。後他にもあるから。」