第2章 【どさくさ】
「心配だからって図書室に留め置いてた癖にそっちが心配だからって今度はここですか、何考えてるんです。澤村さんがよく許しましたね。」
「ああ、うん、当初は苦笑いされたけど。」
「そうでしょうとも。」
「でも何か通った。」
「どういうことです、まったく。毎度言う事聞くままコさんもままコさんですね。」
月島は一通り文句を言って日向と謎の会話を続ける美沙を見つめる。しかし後で山口がこっそり力に語った所によるとちょっと羨ましそうな顔をしていたと言う。
まぁそれはともかくとして美沙と日向と谷地は力も見守る中わいわいとやっていた。
「何かさー、美沙が好きっていう奴みんな地味な感じのばっかだな。」
「そない言うてもなぁ。」
美沙はやはり困った様子で笑う。
「何かこういう落ち着く感じのキャラ好きやねん。」
「何となくわかる気はするかなぁ。」
「えっ、谷地さんもっ。」
「あ、好きって程じゃないけど。というか、あれ。」
ここで谷地が語尾を疑問形にして呟いた。
「何か美沙さんが好きって言うキャラ、ほとんどが髪の毛黒くて短めの男の子だよね。」
「あ、ホントだ。うーん。」
珍しく考え込む日向に美沙はどないしたんと問う。
「何か誰かに似てる。」
「そういえば」
「えー、何なん2人して。」
美沙は言うが日向と谷地はうんうん唸っている。ここで口を挟んだのはまさかの清水だった。
「縁下じゃないの。」
一瞬部室内の空気が凍った。もちろん名指しされてしまった縁下力本人は硬直状態だった。しかし清水はあらどうしたのといった様子で淡々と続ける。
「美沙ちゃん、それに載ってるバレーボールの漫画好きよね。一番好きって言ってたキャラ、確か番号が縁下と一緒。」
凍った所へ更にヒビが入ったような気分、たちまちのうちに美沙は動揺した。