第16章 【赤面ノシタ】
「ぐぬぬぬ。」
その日の放課後、男子排球部の部室にて田中龍之介と西谷夕が月刊バリボー!!のバックナンバーを広げて唸っていた。何を見ているのかと思えばいつぞやの青城の及川が特集されているページだ。腹を立てるくらいならよせばいいのにわざわざ読んで打倒優男とでも言いたげに2人でメラメラしている。
「何やってんのお前ら。」
力は着替えながらそんな田中らに声をかけた。
「何っておめ。」
「見りゃわかんだろ、力。」
「わかるか、馬鹿。」
力は冷たく言い木下が乗っかる。
「縁下がわかんないって事は他はますますわかんねーって事だな。」
「久志てめーっ。」
「最近おめーは何係なんだあああっ。」
叫ぶ西谷に続けて喚く田中、木下はしれっと答える。
「縁下がネタに身を堕としたせいで苦労してる成田を補助する係、ついでにお前らを煽ってくスタイル。」
「木下、俺に何か恨みがあるのか。」
「恨みはねーけど美沙さん絡んだ時については若干文句があるな。」
「で話は戻って、」
「成田っ、こいつヌルリと話題すり替えやがったっ。」
「また新しいパターンか。美沙さんの影響が更に強くなったのかな。」
成田と木下の言いたい放題はもういつもの事だ、力はやはり月バリを見てワナワナしている田中と西谷に冷ややかな視線を向ける。
「とりあえず腹立つならわざわざ及川さんのページ読むなよ、それもバレー関係ない情報。」
「何言ってんだ力っ、こうやって闘争心を絶やさねーようにすんだろがっ。」
「んな事しなくてもお前と田中は無駄に喧嘩っ早いだろ、テストは除いて。」
痛いところを突かれてぐはっと呻く田中西谷コンビを無視し力は広げられたページに目を向ける。掲載されている写真の及川は大衆受けする笑みを浮かべていてとてもじゃないがハンドルネームままコに付きまとっては岩泉にどつかれているなんてわからない。ホント、何でうちの美沙はこの人に好かれちゃったんだろうと今更になって力は思う。そしてこうも思った、何で美沙はバレーボール専門誌に掲載されるような人物とは真逆の平々凡々、漫画で言えばモブとか言われるような自分を選んだのだろう。一方で田中と西谷は懲りずに闘争心の維持に努めていた。努力の方向音痴とも言う。