第15章 【玉の緒は】
「ちょおやっちゃんまで堪忍してえなっ。」
「ご、ごめん、でも美沙さんコアなファンついてるし。」
「コアなファンて。」
「それこそ及川さんとか音駒の灰羽君とか。」
「あれはどうなんやろか、及川さんはハンドルネームままコのファンやとか何とか言うてるらしいけど。そんでまたスマホうるさいな、リエーフか。勉強わからんどないしょうて知らんがなっ。」
1人ノリ突っ込みをする美沙に谷地はくすくす笑いが止まらない。一方灰羽の対応に困った美沙は文字を入力、予測変換でひっかかったキノコキャラのスタンプを送りつける。程なく返信が来た。
「しめじ系のスタンプ送ってくるな言うてきたわ。」
「何でしめじ。」
「返事に困ってもたから適当にやった。ちなみにエリンギとか舞茸もおるで。」
「好きだねえ。」
「あ、また返信やこいつ勉強せんでええんかいな。ええ加減にせんとタマゴタケの画像送りつけるて言うたろかな。」
「テングタケ科テングタケ属だけど食べられる奴だねっ。」
「さすがやっちゃんっ。」
ヒョロヒョロの関西弁少女とちっちゃい系可愛いの少女はウェーイとノリよくハイタッチをする。
「何やってんの、2人とも。」
後ろからかけられた柔らかい声に美沙はふぎゃああっ、谷地はほぎゃああっと叫んだ。
店から出てきた美沙の義兄、縁下力が袋片手にぽかんとしている。更に店番をしていた烏養繋心も出てきた。
「コルァーっ、またお前か縁下妹っ。」
「何で私っ。」
「またこの半分ボケはっ、声でけえ自覚ねーのかっ。」
「そーゆー烏養さんかて」
「何か言ったか。」
「こら美沙っ、それ以上はやめろっ。」
間一髪であった。