第14章 【電脳少女、偵察に行く その4】
そういう訳で縁下美沙、日向翔陽、影山飛雄の3人は白鳥沢の敷地から脱出し、美沙はその義兄のもとへと帰る。
「行かせるんじゃなかった。」
帰ってから状況を報告すると早速義兄の力に言われた。美沙は言うと思たわ、と心の中で呟く。
「牛島さんどころか他の人にも顔が割れたてしかもつい駄弁ったって。こないだは伊達工で今度は白鳥沢でお前どこまでネタ振りまくの。」
流石の美沙もこれはないと思う。自分が絡んだらネタ満載になる義兄に言われたくないものだ。
「何か言いたげだな。」
「べ、べつに何も。」
「こっち見て言おうか。」
「ふぎゃああっ。」
視線をそらしていた美沙は顔を掴まれ無理矢理義兄の方を向かされる。
「まあ成田や木下が言ってたみたいにボケにボケが重なって収拾つかなくなるよりかはマシだけど。」
「あの人らは何の話してたん。」
「そのまま。」
「先輩方が何気にえげつない件。」
「最近はこんなんばっかだよ。」
美沙はやれやれと首を振る。
「ああ、そうそう。」
ここで力が思い出したように言う。
「また色物に好かれてないだろうな。」
「心配の方向おかしないっ。」
美沙は疑問形で突っ込むが力はおかしかないよと返す。
「現時点で青城の及川さん、音駒の灰羽君に山本君に好かれちゃってるだろ。伊達工はどうだか知らないけど、ああ音駒で言えば犬岡君も入るのかな。」
「全員色物枠かっ。」
「違わないだろ。」
「えらいこと言うてるわ。」
「とりあえずそういう訳だからまたなりかねないなって。」
「別にどーっちゅうことないやん。なんにせよ今んとこ大丈夫、と思う。」
「怪しいな。」
「いやあの兄さん。」
美沙は大変困惑するが力は容赦なく言った。
「お前こっち来てから随分経つけどあんま人疑わないのは変わらないから。」
しょぼんとする美沙、ふいに視界が暗くなる。
「それが良いところでもあるんだけどね。」
美沙を抱っこしながら力はそう話を締めた。
一方、白鳥沢の男子バレー部では以下の会話がなされていた。
「面白かったねえ、若利君。」
天童がニヤニヤしながら言う。
「別に。」
対する牛島はやはり抑揚なく呟く。