第13章 【電脳少女、偵察に行く その3】
「お、お前っ、牛島さんに何てこと、をっ。」
「言いつつめっちゃ笑(わろ)てるやないの。」
「ちょ、ちょっと、若利君どーなってんの天然に天然言われてるじゃんっ。」
「何の話だ。」
「これで他所様に天然言われるん何度目やろ、私。」
「お前はそのままだ、仕方あるまい。」
「相変わらずですね、ウシワカさんは。」
「だからその呼び方はやめろ。及川にもクレームを入れたはずだが。」
「すみません、私の中で定着してもて。」
その間にやっと天童と五色が落ち着いた。
「あー、おかしい。君ホントやるねー。」
「私は思たまんまを。」
「くそ、またやられた。」
「君は君で何を張り合(お)うてんの。」
「うるさいっ。」
「はいはい、工は落ち着きなさいって。そっかあ君烏野なのねん。もしかしてバレー部の関係者。」
「まあ兄がバレー部なんで。」
美沙はモゴモゴと言う。天童の目が落ち着かない。見透かしているような感じ、青城の及川も似た所があるがそれとはまた違う何かを感じる。
「お兄さんって誰。」
「6番の控え選手らしい。」
「若利君サンキュー、でもこの子から聞きたいんだけど。ね、ままコちゃん。」
美沙はうーと唸る。が、どの道また牛島が喋る可能性を考えると同じことかと結論した。例によってガジェットケースからスマホを取り出し写真を呼び出す。
「この人です。」
天童と五色はまたぶっと吹いた。
「七三っ、だっせえっ。」
「ダサい言うなきちんとしてる言うて。」
「ダサいもんはダサいだろ、今時七三ってっ。」
「そーゆー君かて前髪めっちゃパッツンやん、弄りがいあるで。」
「なんだとっ、パッツンとか言うなっ。」
「事実やん。」
「黙れ電脳っ。」
「言うたな脳筋っ。」
ガルルルと威嚇する五色、言い返す美沙、これはいけないと思った天童が割って入る。
「はいはい工、その辺でね。てか若利君も止めなよー。」
「楽しんでじゃれ合っているのかと思っていた。」
「あーそー。」
天童は呟き、それにしてもと話を戻す。
「地味なおにーちゃんだねえ。若利君知ってるの。」
「一度だけ道で会った。こいつを迎えに来ていた。」
「若利君がこの手のタイプ覚えてるなんて衝撃。」
「そーいえばっ。」
五色がまた声を上げた。