第13章 【電脳少女、偵察に行く その3】
「お前嘘ついてるだろっ。」
「ついてへんよ、何で。」
「だってこの人お前と全然顔が違うぞ、本当ににーちゃんかよっ。」
これまたいつもの事である、美沙はああと呟いた。
「そらそうや、だって義理の兄さんやもん。」
「は。」
さらりと言う美沙に五色は可哀想なくらい硬直し側(はた)で聞いていた天童もマジですかと言いたげな顔で絶句した。しばらくして先に復活したのは天童だった。
「訳ありなのね。」
結局美沙はいつも通りそのまま語った。
「両親はもう亡くなってた、ばあちゃんに育ててもろたけど瀬戸内海の人やったから私も関西弁になってもた、そのばあちゃんも亡くなって親戚も引き取ってくれへんかったからお母さんのお友達やった人の所に引き取られた、そんで学校変わって名前も変わった。そんで、や」
ここで美沙は五色を見つめる。五色はうおおおおと号泣していた。様子を見ていた牛島が口を挟む。
「お前はもう少し身の上を話す事について考えるべきではないか。」
「せやけどほんまの事やし。」
牛島に言われて美沙は困ってしまう。一方の天童は面白そうに言う。
「工ー、泣きすぎ。」
「だって、あまりにもっ。」
「いや別に泣かんでも私全くもって苦労してへんからちゅうか何で必ず泣きはる人が出てまうんやろ。」
「そりゃそんなドラマチックな身の上聞かされちゃあネ。工みたいなタイプは一発で来るわ。」
美沙が困惑し牛島は動じず天童が面白がっている中、五色は鼻をすすりながらも落ち着いた。
「お前っ、」
いきなり美沙を指差してくる。
「ホントの名前はっ。」
美沙はビビった。天童がクスクス笑っているがそっちに突っ込む余裕はない。