第13章 【電脳少女、偵察に行く その3】
より正確に言えばそれだけではなくスマホ好きの意味も含まれていると思われるがわざわざ補足することはないだろうと美沙は思う。
「でもそれって普通なの。絶対違うでしょ。」
「再生数3桁程度のどマイナーですから。」
「ん、なーんか君基準がおかしいぞ。」
「何だお前オタクかっ、根暗のオタクがうちを覗きに来るってなんだよっ。」
五色は一言余計だった。しかしよくあることだ、美沙はこう言った。
「どこの集団にも色んな人がいると思うんだけどその辺はどう考える。」
疑問形で静かに笑って言われた五色はうっと詰まり天童はアッハッハと腹を抱えて笑う。この場に日向と影山がいたら美沙の笑顔が義兄に似てると騒いだかもしれない。
「工、やられたねぇ。」
「くそ、こいつ、やる。」
「普通です。」
「嘘つけええええっ、そんなTシャツ着てウロウロしてる奴のどこが普通だああああっ。」
「これは先輩から貰いました。その先輩はいつもこんなの着てます。」
「やっぱり変だろうがあああっ。」
「ウシワカさんのお仲間は賑やかですね。」
「こいつはお前と学年が一緒だ。」
「なんという。」
美沙はしれっと抜かし、また逃げようとしたが今度は天童に阻まれる。ガジェットケースの紐を掴まれてしまったのだ。
「で、アンタ誰。」
「ちっ、あかんかったか。」
「あれ、関西弁。」
「こいつは烏野の生徒だ。おばあさんに育てられて関西弁になったらしい。」
牛島がしなくてもいい説明をする。そもそもそこまで覚えていて何故自分達兄妹の名前を覚えられないのかが美沙にはよくわからない。
「どしたの若利君、珍しく他人のプライベート覚えてるじゃん。」
「こいつは何かと衝撃的だった。」
「牛島さんがですかっ。」
「何故驚く。俺は機械ではない。」
一瞬美沙を含めその場にいた連中は沈黙する。
「まあ機械やないけど」
開き直って関西弁で美沙はポツリと呟いた。
「天然やんね。」
たちまちのうちに天童が笑い転げ、五色がブーッと吹き出した。