第12章 【電脳少女、偵察に行く その2】
さて、縁下力の義妹への世話焼きはともかくとして日向翔陽、影山飛雄、縁下美沙の3人は白鳥沢学園高等部へと向かった。一度行った事があるという日向達のおかげで迷子の心配はなくとりあえず近くまでやってきた。
「おおきたー、またきたぞー。」
「日向ソワソワしすぎやで。」
「うう。」
「影山も気負い過ぎ。とりあえず人いっぱいおって皆さん行ったり来たりみたいやから私らも紛れたろか、忘れ物とりに行きますみたいな感じで。」
「お、おう。」
驚くべき事に半分ボケの美沙が日向と影山を引っ張っている。そういう訳でこやつらは意味があるのかないのかわからない一芝居を打った。
「あーごめん、忘れ物した。」
「えーっ。」
「てめ、このボゲ。」
「取りに行く。」
「俺も行くっ。」
「ちっ、置いてきぼりはごめんだ、俺も行く。」
日向と影山もよく頑張ったものである。そうやって3人はやっちまったみたいな顔をしてバタバタ走り、まんまと白鳥沢の敷地に入り込んだ。
「ごめーん、ちょっとどいてー。」
バタバタ走る奴らに何事かと見てくる連中に標準語で言う美沙、誰かがおいお前ら何バタバタしてんだと笑いながら言ってくる。
「うるさーい、忘れ物したのー。」
美沙はやはり標準語で言い返ししかも相手は普通に信じた模様だった。
「影山、影山。」
日向がコソコソと言う。
「美沙がしたのーとか言ってるぞっ。」
「お、おう。」
「何か気持ち悪いっ、あんなの美沙じゃないっ。」
「つーかままコって嘘つくの下手じゃなかったか。いつもならごまかしてもすぐバレるのに。」
「ハッ、美沙も進化したとかっ。」
「ままコ、やるな。」
阿呆な事を言っている間にバレーボール部が練習している体育館が見えてきた。
「あの建物でええん。」
人気がないのを確認しつつ美沙は日向と影山に尋ね、2人は頷く。そうやって3人は体育館に到着した。
一方こちらは義兄の力の方である。
「縁下、そわそわしすぎ。」
帰り道、成田に言われて力はギクリとした。
「行っといでって言ったんだろ、もう腹くくれよ。」
言う成田に木下もそうそうと言う。