第11章 【電脳少女、偵察に行く その1】
「よし、じゃあ行っといで。美沙、なるべく夕飯までには帰ってこいよ。」
「はーい。」
「でもその前に。」
言って力が鞄をゴソゴソしだしたので美沙と日向と影山は揃って首を傾げた。背丈のある影山もやっているせいでかなり笑える光景だ。
「はい美沙、これ。」
「兄さん、何これTシャツ。」
「西谷がお前に作ってくれたって。」
「え、ええのん、悪いなぁ。」
「いいからとっときな、後でお礼は言うんだよ。とりあえずお前だけ制服じゃ目立つからそれ着な。」
美沙はうん、と頷いて渡されたTシャツを広げてみる。
「兄さん、えと、その。」
「西谷クオリティはどうにもならないから諦めて。違法電波にしようとしたのは阻止したから。」
「それはええとしてこれもたいがい目立つんちゃう。」
「ないよかマシだろ。」
「わ、わかった。」
「はい、じゃああっちで着替えて。」
「はひ。」
語尾がおかしい返事をして美沙は物陰で素早く着替え、日向と影山と一緒に出発した。
「遅くなりそうなら連絡しろよー。」
「兄さんもうええってっ、こら日向吹き出すな影山も密かにピクピクすなーっ。」
わあわあやりながら美沙と日向と影山が行った後、力の所に成田と木下がやってきた。
「縁下何やってんのお前、ますます親父さんみたいになってるぞ。貰ったのは子供じゃなくて妹だろ。」
あたりを憚(はばか)りながらヒソヒソいう成田に木下がニヤニヤしながら言う。
「嫁を育成してんじゃねえの。何とかメーカーみたいな。」
「木下、そろそろはっ倒していいか。」
「何でだよっ。」
「そりゃ理不尽ってもんだよ、縁下。」
「というかますますお前らの弄り方がエスカレートしてる気がするんだけど。」
ため息をつく力に対し成田と木下は同時にえ、と言った。
「あんだけ美沙さん絡みでネタ撒き散らしといて、」
「弄られねーと思う訳。」
「まだ俺と木下だからマシだろ、田中と西谷だったらもう収拾つかないぞ。」
「あいつらは問題外の更に外だよ。」
「何ですかコラ。」