第11章 【電脳少女、偵察に行く その1】
「頼むってー、影山とだけで行ったら絶対どっかで喧嘩になるからさー。」
「知らんがなっ、あんたら元々喧嘩するほど仲がええ系やないの。」
「ま、ままコ、頼む。俺こいつで何かあったら多分我慢できねー。」
「あんたらバレーボールの技術だけやのうてその辺のせいで変人コンビ言われとんちゃうか。」
「そんなことより美沙ー。」
「ままコっ、マジ頼む。」
情けない声で尚も言う日向、無駄にガチガチに頭を下げる影山、美沙は困り果てる。
「わ、わかった。」
結局押される美沙だった。これはこれで情けない。
「せやけどちょお待って、まず兄さんに声かけるから。」
「え、縁下さんに言うの。」
「当たり前やろ言わんかったらどこ行ったとか何で許可なく行ったとか言うて大騒ぎになるがな。にーさーん」
美沙は少し離れた所で成田、木下と話していた義兄の力に声をかけた。程なく力はこちらにやってくる。
「どうした、美沙。」
「日向と影山が私に付き添いしてほしいって。」
「どこに何で。」
「白鳥沢に偵察で。」
「ちょっと待ちな。」
案の定力は言い、日向と影山をチラリと見る。当然2人ともビクッとした。いつもは穏やかでありいい意味で冷静な先輩は美沙が絡んだ時限定で豹変するのを流石のこいつらも学習しているからだ。
「何でそこでうちの美沙なんだ。」
「えと、」
先に日向が少し震えながら言った。
「谷地さん帰っちゃったし、他の人達も忙しそうだし」
「その、」
影山が後を継ぐ。
「縁下さんには前に青城付き合ってもらったら弄られちまったから悪いかなって。あと、俺らだけだとその、何かの拍子に喧嘩になりそう、なので。」
力は困ったような顔をしうーんと唸る。美沙は思わず日向、影山と一緒にドキドキしながら義兄を見つめた。
「いいよ。」
しばしの沈黙の後力は言った。やったっと日向が飛び上がる。
「箱入り娘にもいい経験になるだろ。その代わり」
ここで力は目だけ笑ってない笑顔を日向と影山に向けた。
「見つかった時に美沙だけ見捨てて逃げたら承知しないからそのつもりで。」
「お、おッス。」
日向と影山はビクーッとしてやりすぎなくらい姿勢をただした。