第11章 【電脳少女、偵察に行く その1】
とある日の烏野高校、男子排球部の練習が早めに終わった第二体育館前での話である。
「おかしないか。」
縁下美沙は言った。
「やっちゃんやったらともかく何で私なん。」
美沙は最近になってやっと谷地をやっちゃんと呼ぶようになった。例によってうっかり事故の賜物だが谷地はやっと親密度が上がったといたく喜んだ次第である。
さて、それはともかく美沙に言われた日向は答えた。
「谷地さんご飯作らなきゃいけないからって先帰った。」
「ほな他の人でええやないの、それこそうちの兄さんとか。」
これには影山が答えた。
「縁下さんは前に青城に付き合ってもらったけどそん時向こうで予想外に弄られたから気が引けた。」
「それでもわからん、何で私。」
美沙は首を傾げた。
「俺らだけで行ったら誰かに見つかりそーになった時気づかねーかもしんないじゃん。」
「ちょお待ち。」
「ままコ意外とそういう時落ち着いてっから見張りでいてくれると助かる。」
「いやあのな、影山。」
「とゆー訳で美沙一緒に来てっ。」
「どーゆー訳やあああああああっ。」
明るく言う日向に美沙は盛大に突っ込んだ。
いい加減何の話かと言うと美沙は日向と影山からまた白鳥沢に偵察に行きたいからついてきてくれと言われたのである。唐突すぎるのは勿論、美沙はあの牛島若利に顔が割れている為正直気が進まない。大体何故自分なのか訳がわからない、というところがここまでの流れである。
「あんたらなぁっ、何で毎度毎度私に妙な用事持ち込むんや私は何でも屋か何かかっおかげでクラスの連中にはまた縁下かとか何とか言われるしどないしてくれるんよ。」
「美沙、うるさい。怒ってんじゃなくて突っ込みなのわかるけどうるさい。」
「うん、その辺覚えてくれたのはありがとう日向せやけどやな」
美沙は尚も抵抗しようとしたが日向が美沙ー、と情けない声を出す。