第10章 【義妹、実現する】
そうして1年女子のスウェーデンリレーは思わぬ形で決着した。1-5は最下位から脱却して3位に落ち着く。1-5は美沙含め出場した生徒と盛り上がっている。しかし順位云々よりも日頃スマホケース下げてウロウロしている謎の編入生が誰も予想しなかったあるいは本気にしていなかった追い上げに話題は集中していたのだった。
体育祭が終わり帰りの事だ。縁下兄妹は2人で帰っていた。
「知らなかったよ、お前があんだけ走れるなんて。」
力が呟く。
「私元々短距離よかある程度距離ある方が走れるねん。まあぶっ飛ばしたからあのザマやけど。」
「でも全然運動してないのに。」
「いや兄さん実は、」
美沙はへへへと笑う。
「私前の学校の時よう帰りは学校から最寄り駅まで走っててん。せやからちょいとだけ持久力がある。」
「初耳だな。でもまた何で。」
「あー、えーと」
都合が悪い話らしい。目があからさまに力から逸れている。
「言ってごらん、怒らないから。」
「いや怒られるっちゅうより」
美沙はもごもご言いつつも答えた。
「状況が状況やったから終わったらなるべくはよ学校から離れとうて。」
目を逸らした訳がわかった。
「何とも言えない話だな。でもいい方向に転んだみたいで良かったじゃないか。」
「兄さんはホンマ上手に言うなぁ。」
「別にそんなことないよ。何にせよお疲れ様。」
「兄さんも。」
微笑み合いながら兄妹は夕闇の中、トテトテと歩く。
「俺、明日田中らに弄られそーな気がする。」
「私は月島と日向を警戒かな。」
「何で月島。」
「アンタ阿呆なの何考えてんのホントろくな事しないよねってな事を言うてきそう。」
「なるほど。」
次章に続く