第10章 【義妹、実現する】
「げえええっ、嘘だっ、美沙がめっちゃ速いいいいっ。」
1-1では日向がビビっている。
「ままコってあんなに走れたのか。」
1-3では影山がポカンとしている。
「つつつつツッキー、あれっ。」
「ったく、変なトコで負けず嫌い。」
1-4では山口が動揺し月島が呆れている。
「うおっ、やりおったっ。」
2-2では木下が驚きながらもニヤリとしている。
「美沙ちゃん、凄い。」
3-2では清水が静かに感心している。
「うわわあれ後大丈夫なのか。」
3-3では東峰がガクガクブルブルしている。
「こりゃ驚きだな。」
「アっハっハっハ、やるなぁ美沙ちゃん。縁下のは杞憂だったな。」
3-4では澤村が驚き菅原が笑う。
そして
「おっしゃあああああああああっ。」
当の力は思わずガッツポーズをしていた。
更に美沙は止まらない。残りトラック半周分つまり100メートル、美沙は走り続ける。また1-5が盛り上がる。
「マジかっ、」
成田も言う。
「2人目抜いたっ。」
もはや力はクラスの目などどうでもよくなっていた。
「美沙ーっ、そのまま行けーっ。」
やはり義兄の声に呼応するかのように美沙は飛ばした。ラスト400メートルの走者のスタート位置はちょうど2-4の前だった。
「はいっ。」
美沙の声がパァンと響く。そのまま400メートルの走者にバトンを渡して美沙は体力が尽きたのかバタッと脇に倒れこんだ。
「美沙っ。」
「縁下、落ち着け飛び出すなっ。」
義妹の元へ駆け寄りかねない力を成田が慌てて抑える。
美沙は仰向けに転がり、凄まじい勢いで呼吸をしながらも義兄の方に目をやってにっと笑っていた。
後で成田から言われた話だが一連の出来事の間、力は子供の運動会を見に来た父親みたいだったという。