第10章 【義妹、実現する】
なんやかんやで体育祭当日である。
「うーん。」
2-4の観覧席にて縁下力は唸っていた。
「大丈夫かなぁ。」
「まだ言ってるのか。」
他の種目に出ている奴の席が空いているのをいい事に力の隣に来た成田が呆れたように言った。
「あんまり過保護にしてると美沙さんが自立出来なくなるぞ。」
「成田、その手の言い方やめてくれよ、おかげで大地さんに育児指導とか言われて参るし菅原さんは否定せずに面白がってるし。」
「お前の接し方があれじゃあ俺でなくても言うよ。」
「勘弁してくれ。」
力はため息をつく。今グラウンドでは100メートル走が始まろうとしていて美沙が出場予定の1年女子スウェーデンリレーはその次に控えていた。
いい悪いは別にしてこの年のスウェーデンリレーは出場している生徒の多くは縁下美沙ほどでないにせよ運動が苦手らしきタイプが多かった。それでも中には陸上部など運動部の奴もいるし全体的に真面目に走っていて各クラスの観覧席から応援する声も結構盛り上がっている。グラウンドには××がんばれー、抜けよー、やったれーっの声が響き渡る。特にうるさかったのは2年1組と3組だったかもしれない。力は一度3組の観覧席でどっかで見たツンツン頭が飛び上がって先生に注意されているのが見えた気がする。
まずは100メートル、結構足の速い奴を固めたクラスが多かったのか美沙属する1年5組は早速最下位だ。
「うわぁ、1-5きついな。」
結局席を勝手に変えてもらった成田が力の横で呟く。
「うん。」
力は頷き、あれよあれよと言う間に200メートルの走者へバトンタッチされていくのを見つめる。1-5はかなり遅れて次にバトンタッチした。200メートルの走者は奮闘している。1-5がわあわあ応援しているのが聞こえた。力が見ている間に1-5の走者は少し後ろから2番目の走者との距離を詰めていく。それでも抜くには至らない。
「縁下、次だぞ。」
成田が呟く。300メートルの走者が位置についた。たちまちのうちに1-5がさっきより盛り上がる、次300、縁下だ、頼んだぞーっ、絶対抜けーっ。
「美沙さーんっ、頑張ってーっ。」
谷地の声も聞こえた。しかしそれ以上に他も盛り上がっている。