第7章 【撫で撫でされた話】
「返事きた。」
「返信早(はよ)うて良かったなぁ。何て言うてきはったん。」
美沙が尋ねると影山はわなわな震えている。
「ど、どうしたの。」
谷地があわわわする。影山はスマホを握りつぶすのを何とか堪えたような様子だ。はっきり言おう、怖い顔である。素早さが2段階くらい落ちるかもしれない。影山は黙ってスマホの画面を美沙と谷地に見せた。
「あ。」
少女達は同時に呟いた。
「美沙さん、これ。」
「及川さん、何ぼなんかてやり過ぎやろ。」
影山のスマホ、呼び出されたメールアプリの画面にはこうあった。
"なーんだ、飛雄の事だからもっと悩んで慌てたメール来るかと思ったのにー。ごめんね、わざとなんだ☆後でちゃんと写真送るね。"
「つまりこの圧縮ファイルの中身は写真だったって事かな。」
「ウイルスいうことはないやろね。せやけど写真やったらまさかjpeg(ジェイペグ)か。圧縮してもあんま意味ない思うけど。」
デジカメなどの画像でよく使われるjpegという形式はもともと圧縮されているのでzipなどに圧縮しても大して容量は変わらないと言われる。が、今重要なのはそこではない。影山がわなわなしている間にまたメールが受信される。
「影山、また何か来たで。はい。」
美沙は一旦影山にスマホを返す。どうやら及川からの追加メールだったようだ。影山は1-5の連中がビビるようなオーラを放ちながらまたスマホを美沙に渡した。
"飛雄にしては賢い対応だったからさては美沙ちゃんに聞いたね?あ、因みにこれが本チャンの写真。じゃあねー"
「何がしたかったのかな。」
谷地がポツリと呟いた。額に汗が浮かんでいる。
「お暇やったんやろねぇ。影山、そないイライラせんと。こんなんネタやネタ。」
美沙は雰囲気がおどろおどろしくなっている影山のでかい背中を撫で撫でして慰める。
「しかしウヘペロした自撮り写真送りつけられたらそら腹立つわなぁ。」
「くそ、何か色々負けた気分だ。」
「はいはい考え過ぎ考え過ぎ。後で私からも言うといたるから、な。ほんで谷地さんはどないしたん。」
美沙は影山の背中を撫で撫でしながら谷地に尋ねる。谷地はブブブと笑いをこらえていた。