第7章 【撫で撫でされた話】
とある日の烏野高校、休み時間の事である。男子排球部マネージャー谷地仁花と2-4縁下力の義妹縁下美沙はお喋りに夢中だっだ。が、
「あれ、」
谷地がふと呟いた。
「影山君だ。」
「何か妙な予感。」
美沙は関西弁の抑揚で呟く。影山や日向が1-5に来た時は大抵谷地か自分に妙な用事を持ち込む事が多いからだ。その影山は教室のドアの所で近くにいたクラスの奴に声をかけている。美沙と谷地には聞こえていなかったがこの時影山はややこしい事になっていた。
「おい、ままコいるか。」
言われた1-5の奴は誰の事かわからなかったらしい。途端に影山は慌て始める。
「ヒョロヒョ、いや、スマホオタ、いや、エ、エ」
とっとと言えば良いものを彼の中で何かが抵抗しているようだ。その間にも相手をしている方は首を傾げるので時間ばかり食ってしまう。
「あいつどないしたんや、谷地さんに用事やったらとっとと言うやろに。いつもそないしてるやんな。」
様子を見ていた美沙は首を傾げ、谷地もうーんそうだねぇ、と呟く。
「あ、でもちょっと待って。」
谷地はピンと来た顔をした。
「もしかして美沙さんに用事じゃないの。」
「せやろか。何にせよ難儀しとるみたいやからちょお行ったろか。」
「そうだね。」
美沙は谷地と一緒に席を立ち、影山のもとへ駆け寄った。
「影山君。」
「アンタどないしたん。」
「あ、お、ままコ。」
影山は言って顔を真っ赤にした。茹で蛸かと突っ込みたくなる。
「聞きてー事があって。」
「私にかいな。」
そんなやり取りをしていたら最初に影山に声をかけられた奴が何だ、とため息をついた。ままコって縁下の事かと呟くそいつに影山は恥ずかしさも手伝ってがうっと言う。
「だから言ってんだろーが。」
相手はそんな事知らねーよ、とブツブツ言うので美沙と谷地は慌てる。
「ま、まあまあ、こらえてやってくれ。」
「ゴメンね、影山君いつも美沙さんの事ああ呼んでるから。」
2人があわあわとフォローしている間に5組の連中がなんだアレと言い出す。そして誰かがおきまりのセリフを吐いた、また縁下か、と。
「えーと」
相手が何とかおさまり、美沙は気を取り直して影山に言った。