第6章 【兄シャツ】
家に帰ると義妹が兄シャツをしていた。
いきなり何だと思われるだろうがそのままである。縁下力がいつものように部活を終えて家に帰ると義妹の美沙が自分の部屋のベッドで眠っていた。しかも、しかもだ、力が部屋着用に使っているTシャツを上から着ていた。
まさかの萌えシチュエーション的な何かに対して力は言葉が出ずにうくっと喉を鳴らした。
が、とりあえず現実を見るしかない。力はしばし義妹の寝姿を見つめていた。何やってんだよこいつと思う。前にも一度あった、帰ったら義妹が1人自分のベッドの中でコロコロしながら甘えたモード全開で独り言を、おそらく当時なかなか力に言えなかったであろうことを言っていた。おかげで自分ばっかり美沙を可愛がっているのかと不安になっていた所は解消された訳だがまさか二度目にこうなるとは思わない。
まずこれってアレかなと力は考えた、巷で聞く彼シャツかな。まぁ実態で考えたら彼シャツだけど俺ら表向きは兄妹だし兄(あに)シャツかな。
とまぁここまで力は考えたがこの際細かい事はいい。これは力にとっての萌えシチュエーションだ。一線を越えてまで愛してしまった義妹が自分のシャツを着て枕を抱っこして自分のベッドで眠っている。美沙が妹になってから自分に起きるとは思わなかった色々なシチュエーションを体験したがとうとうここまできたか。一方でこうも思った、また淋しい思いをしていたのだろうかと。
力はハァとため息をつき、まだ義妹がぐっすり寝ていることを確かめてから先に着替えにかかった。
着替えてから力は美沙を起こしにかかった。
「美沙、起きな。もう夜だぞ。」
しかし日頃から寝起きが悪い義妹はんー、とは言うものの起きない。
「ほら、起きろって。」
義妹はふにーと外ではまず言わない声を出す。もちろん起きない。困ったなと力は思った。烏野の連中がいる所だとみんなの見てる前で抱っこするという脅しが使えるが家では効力がない。気は進まないけど物理的に引っ張り起こすしかないかと考える。ここで力はいや待てよと思った。
逆に抱っこしてやったらいいんじゃないか。