第5章 【スタッフ:まま兄】
「ところで美沙、」
力はふと拾い上げていた美沙の絵コンテもどきに目を戻した。
「この1:03辺りは場面切り替えを発光にするのがいいんじゃないか、曲がこれなんだろ。」
「せやろか、試しに差し替えてみよ。えいっ。どないやろ。」
「うーん、タイムラインだけじゃよくわからないな。」
「ほなプレビューの窓呼び出して、ほい、再生。あ、ええ感じ。流石兄さん。」
「それほどでも。んー、切り替えまでの秒数あともう少し縮められるかい。」
「いけるよ。こんなもん、かい、な。」
「あ、いい。お前の直感流石だな。」
兄妹は液晶画面を見つめてああでもないこうでもないと言い合い、動画編集ソフトのタイムラインは少しずつ埋まっていくのだった。
後日、力のスマホのメッセージアプリに着信があった。
"ヤッホー縁下君、動画サイトデビューおめでとー♪"
"久しぶり、とうとうままコさんと一緒にデジタルに手を出したのかい?"
お馴染み青葉城西高校の及川徹と東京の梟谷学園高校の赤葦京治からテキストメッセージが来たのだ。
「まさかこっちに来るとは思わなかったな。」
力は苦笑しつつもそれらに返信する。
もしとあるサイトでハンドルネームままコによる最新の投稿動画を見た者は最後にこんな文字を目にするだろう。
"Special Thanks to まま兄(あに)
※監督業が得意なうp主の兄"
次章に続く