第34章 【その後の対外報告】
いよいよ最後だ。
「ええっ、何それっ。」
及川徹が声を上げる。
「また妙な事が起きたもんだな、どこのドラマだよ。お前ら兄妹何か憑いてんのか。」
呆れたように言う岩泉一に縁下力、美沙の義兄妹は苦笑するしかない。
とある休日のとあるファミレス、一体どういう風の吹き回しか及川が縁下兄妹を誘ったのである。岩泉ははなから含まれていて何で俺までとブツブツ言っていたのだが。
「それにしても美沙ちゃんの父ちゃんひどくない。自分がほったらかしといてさ、今頃になって連れて行こうとするとか何なのさっ。」
「何でおめーが怒ってんだ、クソ川。」
「だって腹立つじゃん、俺の可愛い美沙ちゃんにー。」
「あの、美沙はうちの子です。」
「ちぇっ、所有権の主張は絶対抜かさないよね縁下君は。」
「そりゃあまあ。」
「とりあえずアホ川は一旦黙れ。」
「ひどいっ。」
抗議する及川を無視して岩泉はまだ一言も発していない美沙にで、と話を向ける。
「当の本人的にはどうなんだよ。」
美沙は口に運んでいた海老を飲み込んでから言った。
「まさかでくわすとは思わんかったからびっくりしました。せやけどもし会った所で今の家から離れるつもりはないってことは決めとったから、それはちゃんと言えて向こうもあっさり引き下がってくれたからええかなって思てます。」
「呑気なもんだな。元々その親父さんのおかげで苦労したとこもあったろうに。」
「まぁそう言うたらそうなんですけど」
うーんと、と考えながら美沙はご飯を一口食してしばしモグモグする。モグモグが終わってから美沙は一気に語った。
「もうええんです。結局お父さんは私がばあちゃんのもとにおった時からこっそり支援してくれてて、おかげでばあちゃんのもとにおる間も極端に不自由することはのうて、寂しかったしいじめられたりはしたけど我慢しとる内にめっちゃラッキーがあって縁下美沙になれてお父さんもお母さんも兄さんも出来て今幸せやから。」
美沙はこの時危うく兄さんではなく力さんと言いかけていて及川は聞き逃さなかったのだが突っ込まなかった辺りはさすがである。
「はん。」
岩泉が呟く。