第34章 【その後の対外報告】
現・縁下美沙の実父が見つかったという話は烏野高校男子排球部関係者以外へも伝わった。
まずは東京、音駒高校の男子バレーボール部の部室である。
「メール、翔陽からだ。」
呟きスマホを見つめる孤爪研磨、やがてその目が僅かだが大きめに開く。
「おい、どうした研磨。」
黒尾が怪訝に思って尋ねると孤爪はボソリと聞き捨てならない事を呟いた。
「縁下君とこの美沙さん、本当のお父さんが見つかったんだって。」
たちまちのうちに音駒のメンバーは黒尾も含めて多くがええええええっと声を上げた。上げなかったのは福永と海だが福永の顔はあからさまにびっくりしており海は笑顔のまま固まってこめかみ辺りに汗が浮かんでいる。
「おいおい、あの地味リボンの親父って死んだんじゃなかったのかよ。」
黒尾が当然の疑問を口にした。
「何でもおばあさんとか縁下君の親御さんとかが隠してたみたいだよ。向こうからやってきて美沙さん連れて行こうとしたみたい。」
「ぬわんだとぉぉぉぉっ、美沙さんはっ美沙さんはご無事なのかああああああっ。」
「山本うるさい。無事じゃなかったらいくら翔陽でも呑気にメールしてこないから。」
「俺そんな話きーてないっすっ。犬岡、お前んとこはきたかっ。」
「来てないっ。」
「ううう、美沙の奴俺らは仲間外れかよーっ。」
「美沙さんからしたらいちいちリエーフと犬岡に言う事じゃないと思う。」
「じゃー何で翔陽は研磨さんにメールするんすかっ。」
「単に何も考えてないだけ。多分縁下君も翔陽に口止めしてないんじゃない。するだけ無駄だしね。」
「研磨、何気にあのチビちゃんのことボロカス言ってないか。」
恐る恐る言う夜久に孤爪はそお、ととぼける。
「それにしてももうすっかり引き取ってくれた所に馴染んでる子を連れて行こうだなんて大胆だな。」
海が呟いた。
「縁下君が一番気が気でなかったと思う。」
「あのお兄さんは妹さん溺愛してますもんね。」
芝山が悪気なくニッコリ笑って言うが芝山にまで言われるようでは縁下兄妹の立場はないと言えよう。