第32章 【義兄妹、事後報告】
言って力は美沙を抱きしめ直す。その手が微かに震えている事に美沙は気づいていただろうか。恥ずかしいなと力はちらりと思う。一番恐怖していたのは美沙のはずだろう。そう思っていたら義妹がぐいっと自分の顔を引き寄せてくる。何と思う間もない、気づけば義妹がかなりに無理矢理に唇を重ねてきた。それだけでは足りなかったのか頬や額や首の辺りにも小さな赤い唇が押し当てられる。まるで突然の雨のようなその行為に力は目を見開いた。
「美沙。」
呟く力を美沙は潤んだ目で真っ直ぐ見つめてきた。そしてほんの少しううーと唸ってから美沙は言った。
「大好き。」
「知ってるよ。」
「ずっとずっと大好き。」
「俺もだよ。」
「ずっとここにおる。」
「嬉しいよ。」
「せやから」
「うん、って、うわっ。」
ここで美沙がまたガバッと力に抱きつき直した為力は視界が90度回転した。
「こら美沙、危ないだろ。」
ところが今回に限り美沙は力の言う事をわざと無視した。
「力さんはずっと私のやの。」
甘えたモード全開の声で美沙ははっきり言った。
「他の子んとこ行ったらあかんの。絶対あげへんの。私の力さんやの。私がずっと独り占めやの。」
こいつは何度俺の心を撃ち抜けば気がすむんだろう。そう思った瞬間力は逆に美沙を抱えて転がる。今度は美沙が180度回転してしまった。
「力さん。」
「阿呆。」
力は微笑んだ。
「そんな事言って、次は首輪でもつけてほしいのか。」
「力さんがどうしてもそうしたいんやったら。」
呑気な顔でさらりと言う美沙、まさかの返しに力は一瞬うぐっとなった。
「進化したな。」
言うと美沙はキリッてな顔をしている。