第32章 【義兄妹、事後報告】
そうして排球部の連中と別れて縁下兄妹は帰宅する。帰宅して早速兄妹は先程まであった事を両親に報告した。両親は気の毒なくらいに動揺した様子を見せ、やはり何故出会ったのが美沙の実父であるとわかったのかと聞いてきた。そこも兄妹は正直に無理を言って谷地円から聞いた事を話す。
食堂で向かい合って座る兄妹と両親である縁下夫妻、夫妻は揃ってため息をついた。しかし遅かれ早かれ言わねばならなかった事だとそれ以上兄妹を責める事はしなかった。
美沙の実父に関しては谷地円から話があったとおり、美沙の実母と付き合っていたが子供ができた事を知って別れたのは事実だと言う。美沙の実母は勿論がっくりきたものの子供は産む気まんまんで奮闘していたようだ。しかし体があまり丈夫ではないのが祟ったらしい。だからかと美沙は思った。亡くなった祖母が一度だけ実母が亡くなったのはあいつのせいだといった意味の事を言っていたのはこれだったのだ。ただし義母である縁下夫人の話では美沙の祖母も何故そんな男にひっかかったのかと娘をかなり責め立てた様子である。あのばあちゃんならそうなるやろなと美沙は思う。
「それでよう私を産むの許したな。」
ボソリと言う美沙に力がギョッとしてこちらを見た。縁下夫人は美沙の祖母の事だから命を見捨てるのは忍びなかったんだろうと言う。更に恥ずかしいけどと縁下夫人は付け加えた、もし美沙が母親似でなかったら自分達も引き取る事を躊躇したかもしれない。
「母さん、気持ちはわかるけどそれは」
咎めるように力は母に言うが美沙はまあまあとそんな義兄を制止する。
「私は平気やで、そうはならんかったんやから。」
「お前普段ビビりの後ろ向きの癖にこういう時はホント強いな。」
「キリッ。」
「何で声に出したの。」
「音響効果。」
「うん、いらないから。」