第30章 【義妹、意志決定】
「私はもう縁下さんちの子やで。それに何でお母さんと別れたん。何でばあちゃんも縁下のお父さんとお母さんも私に何も教えてくれへんかったん。」
実父は微笑んだまま何も言わない。しぶとく、というと聞こえが悪いがなおも美沙の両肩に手を置いている。
「私、あんまり自分の顔に自信ないねん。でも知ってる人がみんなお母さんにそっくりやって言わはるねん。お父さんは可愛くないから飽きてお母さんを捨てたん。」
見た目云々は関係ないと実父はそこについては思うより強調した。それでも他に好きな人が出来たのは事実でそこへ子供が出来たと聞かされたのとがかぶったという。当然薬丸のおばあさんには弄ばれたせいで娘は精神的に弱り子供を残して亡くなったのだと恨まれ同じように友人だった現縁下夫人や谷地円からも遠ざけられた。美沙の周りの大人が事情を語らなかったのは娘の耳に入れるには辛い話だからという配慮だろうと実父は語る。
「難しい事はようわからんけど」
美沙は身じろぎしながら言った。早く肩から手をどけてほしいと思う。
「それやったら後で好きになった人はどないなったん。その人がおるんやったら私んとこに来る意味あるん。」
美沙にしては考えた方だ。義兄の力が聞いたら褒めてくれたかもしれない。実父はしれっと一度結婚したけど逆に今度は自分が振られた、美沙のところに来たのは今更だけど会ってみたかったからだと言った。今も独身のようだ。何かおかしいと美沙は思った。瞬間半分のボケじゃない方の美沙が回転し始める。実父は気づいているのか否か。
「お父さんはえらいしれっとしてはるんやね。私も時たま言われるけど似たんかな。」