第29章 【義妹、情報収集】
視線を伸びる影に向けつつも美沙は思った通りを口にした。色々あったが自分は今十分過ぎるくらい幸せだ。谷地円からは概要ではあるが実父について知りたい事を教えてもらい未知なるものへの恐怖も大幅に軽減された今、敢えて過去を掘り起こし実父を恨むつもりなどない。
「ただもし迎えに来た言われたら悪いけど断固断る。」
そこまで考えてから美沙は言った。
「私はもう縁下さんちの子やもん。兄さんの、皆のエンノシタイモウトやもん。」
「ああ、そうだな。」
どんどん沈んでいく夕日の中、力は微笑んだ。
「お前はずっとうちの子だもんな。」
「うん。ところで」
「どうした。」
「やっちゃんのお母様にまで天然ボケ言われてもたんやけどどないしょう。」
「事実だからどうしようもないな。」
「兄さんの意地悪っ。」
「そんな事言ってたら日向や影山と騒いでた時に勢い余ってやんけって語尾になってたの父さん達にバラすよ。やんけだなんて柄が悪いって怒られるパターンだよな。」
「ふぎゃあああああっ。」
夕闇の中美沙の叫びが響いた。
次章に続く