第29章 【義妹、情報収集】
なるほどと谷地円は言ってしかしじっと美沙を見つめる。いよいよだと思った美沙は臆することなく視線を合わせる。
「お願いします、小さい事でもいいんです。」
「貴方、本気で言ってるの。」
谷地円は鋭く言う。
「確かに薬丸先輩の事は知ってる、その写真の通り短い間だけど仲良くさせてもらったわ。でも貴方が知りたがってる事は私が勝手に話していいとは思わない。今のご両親に聞きなさいな。」
ドキドキしながら母を見る娘の仁花、同じくドキドキしながら義妹を見る縁下力、一方美沙は引き下がらない。
「今の両親は全然話してくれません。祖母も墓まで持って行きました。」
「そもそも貴方聞いてどうするつもり。」
言われて美沙は目を伏せる。
「具体的にどないしたいとかそういったんはないです。ただ最近今の両親が極端に私が誰かに連れて行かれるのを恐れてる感じで、それが私の本当の父の事っぽくて。私も今の家から離れるんは絶対嫌で、せやけど相手のことをわからんままプルプルするんも嫌なんです。」
ここで美沙はまた谷地円に目を合わせた。
「お願いします。」
普段は半分ボケで通っている娘の友人、その食い下がりぶりに谷地円はため息をついた。
「本当先輩そっくりね。」
「え。」
呟く美沙、谷地も義兄の力も目を丸くして谷地円を見つめる。谷地円は寂しげに微笑んだ。
「薬丸先輩もそうだった。天然ボケで優しいけど一直線で頑固なとこもあって。」
お母さん、と仁花が小さく呟き、母は話を続ける。
「仁花助けてもらった件で初めて会った時びっくりしたわ。顔が生き写しでそのせいかしら、声もそっくりで。しかも縁下さんの所に引き取られて仁花とは友達だって言うじゃない、何の巡り合わせかしらって。」
美沙は目を見開く。体がまた知らないうちに緊張していたのだろう、力がこそっとその手を握る。